近所に住む元カノ…修羅場の予感…

自分語りがウザいのは承知してるが、長くなるかもしれない。俺の実家の近所に小さな商店がある。そこの一人娘が「ユリ(仮名)」。

俺の2コ下。背の高い色白美人で、おとなしいというか暗い印象の子だった。小さい時から顔は知ってたけど、幼馴染みってほど親しくもない。俺は中高とも公立、彼女は私学の女子校に進んで接点が少なかったしな。

急接近したのは俺が地元の大学に進学し、彼女の店でバイトを始めてから。ユリの両親はいかにも商売人って感じの気さくな人で、うちの実家とも普通に近所付き合いしてたんだが、何かの機会に俺がバイトを探してると言ったら「じゃあ、うちで働けば?」となった。たぶん向こうも「手軽な労働力ゲット!」くらいの感覚だったんだろう。

週何回か働くうち、ユリとも普通に言葉を交わす間柄になる。彼女は当時高校生だったが、両親に頼まれて時々勉強も見るようになった。友達が少ないらしく、週末も遊びに行くことはほとんどないと言うから、たまに映画とかコンサートに連れ出してたんだが、そこは健康な若者だ。

働き始めて半年もしないうちに、まあデキてしまったわけだ。俺、高校時代に付き合ってた子はいたが、受験前に別れて当時はフリー。ユリは俺が初彼氏だった。最初にいたした時はもちろん緊張したが、慣れてしまえば雄と雌。週2〜3回は俺の家かラブホで合体するようになる。

さすがにバイト先の店でエッチするのは気が引けたが、向こうの親御さんが出掛けてる時に何度かした。若かったなー。彼女は手脚の長いモデル体型。出る所は出てるし、なかなかスタイルは良かった。おとなしい割にというか、いわゆるムッツリスケベだったんだろう。

外では手を繋いで歩くのも恥ずかしそうにするくせに、ベッドに入ると一変。騎乗位でガンガン攻めてくるし、口に出したら俺が何も言わないのに全部飲んだ。隠れて付き合ってたわけでもないんで、間もなく互いの親も知るところとなる。

最初は微妙な空気。バイトで働いてる分には向こうの両親とも良い関係だったし、微妙な感じなのは家同士の付き合いが長くて気まずいからかな、とか思ってた。ところが、ユリがエスカレーターで女子大に進学したくらいから雲行きが変わる。どうやら彼女、卒業したら俺と結婚したいと親に打ち明けたらしい。

彼女の店は小さいがそこそこの老舗で、一人娘のユリは当然跡継ぎなんだな。実はうちの実家も小さな会社を経営してて、俺は一人っ子。名家でもないが本家なんで、実家には仏壇があるし、先祖代々の墓の世話もある。

「家」の理論じゃ一人っ子同士の結婚はハナから無理筋だったわけだ。俺はと言えば当時は結婚なんて全く考えてなかったし、家の理論にも無頓着。俺の親と向こうの親からそれぞれ呼ばれ、それまで見たことない深刻な表情で「結婚できないってことは分かるよな?」と告げられ、事の重大さを知った。

世間知らず過ぎて恥ずかしいが、あの頃は本当にそんな認識だった。ユリのことは好きだし、駆け落ちしてでも、と考えないわけじゃなかったが、最終的に俺が就職して地元を離れるのを機に別れることにした。俺も甘ちゃんだったし、全てを犠牲にする覚悟というか度胸がなかったんだな。

そこまで好きじゃなかったんだろ、と言われれば、悔しいけど返す言葉がない。ユリは泣いて抵抗したし、俺の就職後、下宿先にも2回やって来た。そのたび俺も身を引き裂かれる思いだったが、こればかりはどうしようもない。

最後は「新しい彼女ができた」ということにして、半ば無理やり諦めさせた。まあ最後の夜、思い出に一晩中エッチしまくった俺も俗物だったと思う。…というのがもう十数年前の話だ。つまり俺も今は30代のオッサン。

俺はその後、今の嫁と出会って結婚。子供2人に恵まれ、郊外のアパートに家族4人で暮らす平々凡々なサラリーマン生活を送ってきた。そんな俺が家族を連れ地元に戻ったのが去年のことだ。もともといつかは家業を継げと言われてたんだが、親父が病気で倒れたんだ。

幸い大事には至らなかったが、もういい年だしそろそろ戻らないかと言われた。俺も管理職の端くれになってたが、転身するなら早い方がいいと考えたわけだ。実家の会社は自宅兼事務所だから、改装すれば6人でもそれほど狭くはない。

両親は孫と同居できるんで大喜び。舅姑と同居する嫁には気を使ったけどな。町内会の用事とか近所付き合いも、半隠居の親父に代わって俺が引き継いだ。地元を離れてる間も年1回は帰省してたが、十数年経つと近所も変わる。

うるさかった餓鬼がピチピチの女子大生になってたり、回覧板を届けに行くといつも一人将棋してた爺さんが亡くなってたり。中学時代、ひそかにズリネタにしてた近所の美人奥さんがブクブク太ったオバちゃんになってたのは少し悲しかった。まあ俺も「○○クン?オジサンになっちゃったねー」と言われたけどな。

引っ越し後の挨拶回りで、気は進まなかったがユリの店にも顔を出した。当たり前だが彼女も30代だ。女子大を出た後、地元でOLを何年かして退職。見合い結婚して子供も生まれたと、うちの両親からは聞いてた。

ユリの両親は元気に店を切り盛りしてた。俺を見て複雑な表情をしながらも「久しぶりだねー、またよろしく」と笑顔で応対するのも社会常識だよな。なるべく早く引き揚げるつもりだったが、運悪く店の奥からユリが出てきた。相変わらず背が高くて色白だが、若い頃より少し痩せたというかやつれた感じ。

美人なのは変わらないが、あまりいい年の取り方をしてないな、と思った。マズいなと思いつつ、ここは腹を括って「ご無沙汰してます」と挨拶。ユリが駆け寄って「いつ戻ってきたの?」と矢継ぎ早に質問を浴びせかける。

目がキラキラしてるのがちょっと怖い。隣にいた俺の嫁も面食らったようだ。俺も向こうの両親も引きつった笑顔だったが、ユリは構わず話し続ける。困ったなと思ってたら、奥から色白の太った男が顔を出して少し怒ったような声で「ユリっ!」と呼び掛けた。旦那らしい。

こっちとしては渡りに船なんで、旦那に会釈して早々に会話を切り上げ。男は俺を睨みつけ、無言のまま奥に戻った。出てくる時もそうだったが、「のそっ」という形容がぴったりくる動きだったな。ともあれ一件落着。…しかし、面倒なのはそれからだった。

うちの会社とユリの店、業種は違うが互いに「お客さん」ではある。さらにタイミングの悪くというか、ユリの両親は町内会の会長で、うちも役員。別に有力者ってわけじゃなくて、こういう仕事は勤め人より自営に回ってくる。

古い土地柄のせいか町内会ががっちり機能してるから、役員になると盆踊りだ秋祭りだ旅行だ忘年会だと面倒な仕事がやたら多い。そんなこんなで、本業を含め週何回かは互いに顔を出さなきゃならないわけだ。それはまあ覚悟の上だったが、困ったことに俺が会長宅の店を訪れるたび、あちらの両親を押しのけるようにユリが出てきて対応するようになった。

こっちとしては居心地の悪いことこの上ないんだが、ユリは「打ち合わせ」と言っては近くの喫茶店に俺を連れ出したがる。ユリが話す内容と言えば、ほとんどが旦那の愚痴。老舗の若旦那なのに、仕事もせず部屋でパソコンをいじってばかりとか。

接客や得意客への挨拶回りどころか、他人とまともに会話もできないとか。揚げ句、周りに人がいないと、旦那が「小さい」とか「早い」とか「下手」とか、夜の夫婦生活の不平不満まで漏らす。それも満面の笑顔で。ユリの旦那が近所付き合いを全くしないってのは、うちの両親から聞いてた。

客商売でそれじゃ大変だろうけど、かといって俺に何ができるわけでもない。だいたいカウンセラーじゃないんだし、夫婦生活のことを愚痴られても困る。そもそも、元彼に見せつけようと「今が幸せ」と強調するならともかく、自分の結婚生活がいかに不幸か、嬉々として話す神経は理解しがたい。

確かに付き合ってた頃も、おとなしいときと明るいときで落差のある子だった。結婚後…というか俺と別れてからはおとなしいだけの子に戻ってたらしいが、向こうの両親は困ったように「○○君と会ったら、昔に戻ったみたい」と話す。これだけ書くとメンヘラみたいだが、普段は全く「普通の奥さん」らしい。

俺と会うときだけ目がハートマークになるというか…。これはこれで怖いんだが。よりを戻して愛人にすれば?と言う奴は、何も分かっちゃいない。俺とユリが付き合ってたと知ってる昔の友達は、地元にいくらでもいる。

近所にも好奇の目を向ける奴はいるはずで、変なことすればほぼ確実にバレる。うちの会社もユリの店も地元にどっぷり根を下ろして商売してるし、暴走したらただの不倫じゃすまなくなるんだわ。加えて俺の嫁は相当に嫉妬深い。基本的に気立てが良くて誠実。

家事も子育ても本当によくやるし、俺にはもったいないくらいの嫁だが、別にモテるわけでもない俺の周囲にいる女性にやたら警戒感を示すんだな。幸いというか結婚後、風俗も浮気も経験したことがない。もちろん嫁を愛してるからだが、それに加えておかしなことをしたら嫁が半狂乱じゃ済まなくなると予想されるからだったりする。情けないが。

最初にユリの店へ行った直後も、嫁は早速「あの女の人って?」と聞いてきた。とりあえず「学生時代にバイトしてて…」と最低限の説明で切り抜けたが、嫁の中で警戒レベル5段階のうち3か4に設定されたのは間違いない。ユリが元カノだと、俺の嫁が知るのも時間の問題だろうな。

嫁と出会う前の話だし後ろめたくはないが、どうもやりにくくてたまらん。ともあれ事務所に来られても対応に困るんで、向こうの店に用事があるときはなるべくユリがいないのを見計らって俺の方から出向くようにした。あちらの両親も俺が困ってるのは承知してるから、こっそり対応してくれるが、ユリが戻ってきて俺を見つけるや「あとは私がやるから」となる。

最近はユリの旦那もこれに加わった。といっても俺の相手をするんじゃなく、奥から文字通り「のそっ」と出てきて、少し離れた所で俺たちを観察するだけ。俺としちゃ旦那に対応してもらった方がまだ気楽なんだが、言葉を発するでもなく細い目から恨みのこもった視線をひたすら送り続ける。これはこれで気持ち悪い。俺の前で目をキラキラ輝かせて話すユリ。引きつった表情のユリ両親。

離れた所で敵意剥き出しの視線を送り続けるユリ旦那。その中で用事をこなすのは、俺にとってかなり精神力が要る。ユリが「うちの人、プライドだけは高くて独占欲が強いのよね」と言うところからすれば、旦那が俺たちの仲を疑ってるのは間違いない。

彼女は「○○さんが元彼だって知ったら、怒り狂うでしょうね♪」と笑うが、もう知ってるんじゃないかという気もする。こないだはユリの旦那が、うちの事務所近くの物陰からものすごい形相でじっとこっちをうかがってるのを目撃。刺されることはないだろうけど、さすがにギョッとした。

ユリだって不倫したら大変なことになるのは分かってるはずだし、そもそもその気がないから堂々と俺に好意を示すんだろう、とは思う。実は夫婦ラブラブで旦那の嫉妬を煽って楽しんでるのか、とも思ったが、それにしちゃ度が過ぎてる。形を変えて捨てられた復讐をしてるんだろうか。何だかモテ男自慢みたいで叩かれそうだな。

俺だって凡人だから、ちょっと格好つけてみたい気持ちはもちろんある。でも正直に告白すると、高校時代の初体験相手が人生初の彼女で、ユリは2番目、今の嫁が3番目の彼女だ。ブサじゃないがイケメンでもない。風俗は嫁と出会う前の女日照りの時代、ヘルスに1回行っただけだし、それ以外の何やかんやを入れても女性経験は片手で収まる人生だった。

同年代の遊んでる奴らと比べたら、はるかに地味じゃないかな。というか俺が女慣れしてたら、もっと上手に立ち回ってたと思う。そういや前に務めてた会社で、俺の職場のトップ(女)とナンバー2(男)が若い頃に恋仲だったと聞いたことがある。もちろん今はそれぞれ家庭持ちだ。

その時は「そんなの気にせず仕事するのがプロなのかねー」と思っただけだが、いざ自分が似た立場になると、なかなか大変だと実感する。嫁が警戒レベルを引き上げた以上、仮に俺がその気になったところでユリとよりを戻すのは不可能だろう。そもそもその気もないし。だったら気にせず淡々と日常生活を送ればいいってのも、分かってるつもり。

後先考えず近場で調達したのが悪いと言われたら、ぐうの音も出ない。それでも、この居心地の悪さは何とかならないかと思うわけだ。全く同じじゃなくても、元カノや元彼の近くに居ざるを得ないとか、連絡を取らなきゃならない人もいると思う。こっちが事務的に対応しても、向こうがそうじゃなかったり、第三者から変な目で見られることもあるはず。

そんな人って、どう波風立てずにやり過ごしてるんだろう。聞かせてほしい。以上、やっぱり長くなってごめん。